2015年12月13日日曜日

「憧れと共に」 第64回明治大学グリークラブの定期演奏会

 第64回明治大学グリークラブの定期演奏会が終了しました。本当に久しぶりですが、ブログに少し書こうと思います。

 4年前から客演という形で、明治大学グリークラブ(以下・明グリ)とは共に活動をしてきましたが、今年度から常任指揮者を拝命したことで、この1年はより長い時間を彼らと一緒に過ごしてきました。新歓の時期に一緒に活動し(他クラブより新歓され)、5月の東京男声六連のコンサートに出て、7月に立命館大学メンネルコールとの交換演奏会を行い、9月には合宿に参加して、10月には全日本合唱コンクールに出場し(そして人数オーバーで失格となり)、そして12月の定期演奏会を迎えたわけです。日本で大学に行っていない私にとって、明グリとの1年は「学生生活」のようなものを追体験できた時間であり、学生の喜び、そして苦しみや悩みも、より身近に感じられた時間でもありました。

 今回の定期演奏会で初演された委嘱組曲「憧れと共に」は、そんな学生達や、彼らを温かく見守っているOB達をインスピレーションに生まれた作品です。以下に演奏会プログラムにのせた文章の一部を載せておきます。

 本楽曲「憧れと共に」は、2014年7月5日に行われた第53回明立交歓演奏会のために作詞・作曲された立命館大学メンネルコール・明治大学グリークラブ による合同委嘱曲である無伴奏男声合唱曲「僕が歌う理由<わけ>」を第四楽章として含む全五楽章のピアノ伴奏付男声合唱組曲です。私の合唱作品としては、初めてのオリジナル日本語男声合唱組曲となります。
 作品の主題は、先行して制作されていた第四楽章の題でもある「僕が歌う理由<わけ>」です。団員のほぼ全員が初心者として入団してくる明治大学グリークラブですが、様々な活動の可能性があっただろう大学生活の中で、合唱を選んだ(選んでしまった!)学生の「音楽を選んだ自分たち」を歌う作品、そして人生の少し先を行く私からの学生達の今後の人生に向けた想いをこめた作品になることを願って作詞作曲を行いました。また、本組曲は機会があれば混声版等をつくること、本組曲「憧れと共に」の第一楽章「歌に憧れて」を最終曲とした「憧れを追いかけて」という主に中高生を対象とした作品を作ることも視野に入れた広がりのある作品となっています。

 この楽曲を創作するにあたりインスピレーションの源泉となった明治大学グリークラブ、立命館大学メンネルコール、そして今でも合唱活動を続けている各団体のOBの皆様に御礼を申し上げます。





1. 歌に憧れて
 初めて音楽に出会ったときのことなんて
覚えていないけど
初めて音楽に恋をしたときのことは
なぜか覚えているんだ

あの時から
無数のメロディーに心奪われ
歌声に心動かされ
体全てが音楽で満たされたときの
あの胸の高鳴り追いかけて
いつの間にか

歌に憧れて
音楽に憧れて
少し背伸びして手にとった楽譜に
僕の音楽は流れ出した

あの曲に憧れた
音楽に憧れた僕の心は
歌い出してしまった
いつの間にか


初めの舞台の記憶なんて
かすかに残る思い出だけど
僕を照らした光の眩しさだけは
なぜか覚えているんだ

あれから何回
音楽に心洗われ
歌声に心揺さぶられ
体全てが情熱に溢れた人の
あの輝き追いかけて
いつの間にか

舞台に憧れて
声の力に憧れて
自分の想いを伝えられる空間で
僕の心は育ち始めた

そして歌に憧れた
音楽に憧れた僕の心は
歌い出してしまったんだ
いつの間にか


2. 音楽になって
誰もいない音楽室
僕だけの音楽室
そっと静かに
ピアノの蓋をあけて
人差し指でなぞった優しいドレミの音

始まりは
いつものドレミの音にのせて
歌の練習から

声にのせて 音たちが
つながりあい かさなりあい
僕の中に 流れる音楽に
心の中の音符たちは
音を 色を 動きを
命を吹き込まれて
音楽になって消えた


楽譜を開けば そこには
誰かが書いた
白黒の音楽の設計図

そっと静かに
声に想いをこめたら 音たちが
つながりあい かさなりあい
僕の心から流れる音楽に
楽譜の上のただの記号たちは
音を 色を 動きを
命を吹き込まれて
音楽になって 嬉しそう消えた



3. 決意
 無数の夢見る人たちの中で
憧れを決意に変えた人がいた
無数の夢に満ちた暗闇の中で
静かに心を燃やす人がいた

迷いを抱きしめる覚悟を
焦りを飲み込む覚悟を
自分を見つめる覚悟をした人がいた

分かれ道で立ち止まる人たちの中で
一人 静かに歩き始めた人がいた


4. 僕が歌う理由<わけ>
鳥がさえずるわけを知りたいなら
風に口笛の音をのせてみればわかるさ
大きな自然に抱かれ明日を夢見る幸せ
そして 共にさえずる誰かが集う喜び

僕が歌うわけもわかるだろう?
この歌が消えていく先にある何かを
ここに集う仲間と
そして あなたと感じるためさ


 5. 僕の歌が続く理由<わけ>
 僕は今まで
いくつの夢を見たのだろう?
いくつの憧れを いくつの願いを
言葉に 歌に
音楽に託したのだろう?

いつか僕が受け取った多くの憧れは
音楽となって誰かの心へとそっと旅立った
そして憧れがつないだ この絆は
新たな出会いへと
挑戦へと 僕を動かした

初めて音楽に出会った時のことなんて
覚えていないけど
あの時 音楽に見た憧れだけは
なぜか僕の中で輝いてるんだ

歌に憧れて
音楽に憧れて
あの時 背伸びして手に取った楽譜が
また僕を音楽へ誘いだした
そして歌に憧れた
音楽に憧れた僕の心は
歌い続けていくんだ これからも
憧れと共に